ゆきのけっしょう

ゆきのけっしょう

“みっつん”とは、1歳のころから、我が家にあった雪の絵本を何冊か読んできました。

『雪の結晶ノート』は、息子にはまだ情報が多すぎ・・・。でも、巻末に雪の結晶の観察方法が詳しく紹介されているところが、私は大好きです。
『たくさんのふしぎ 2017年2月号 ゆきがうまれる』も、他の雪の本たちと並べて表紙だけ見せている状態で、中身を味わうのは、もう少し先になりそうです。

『雪の写真家 ベントレー』も、お話が長いので、1歳のときには、まだちょっと早い感がありました。
2歳の冬には、長い物語も最後まで聞くようになってきました。
先日は、絵本の最後に掲載されている、ベントレーが撮影した結晶の写真を指差して「ゆきのけっしょう!」と嬉しそうに報告してくれました。

『きらきら』は、今の”みっつん”にちょうどよい文字量ですし、さすが谷川俊太郎さんといった、読み聞かせていて心地よい文章、そして中谷宇吉郎さんに影響された吉田六郎さんの写真も美しく、息子も大好きな1冊です。
巻末に、吉田六郎さんがどこでどのように写真を撮ったかということについて息子の吉田覚さんが書いていらっしゃるところが、個人的にはポイントが高かったりします。そこまで読み込めば、科学写真の情報源としての価値もあり、だと思います。
一方で、例えば「たくさんさくさんあつめると ゆきだるま」というページもひたすらに結晶の写真なので、まだ雪だるまを作ったことがない息子は、どのように感じているのかな?というかすかな疑問がよぎったりもしていました。

そんなときに読んだのが、『さいしゅうれっしゃのあとで』です。
「鉄っちゃん」まっしぐらな”みっつん”は、この絵本が大好き。
秋のある夜、最終列車を見送った後に、「ふもとのまち」へ冬を届けに行く列車が何台も通りかかるのですが、その中に「ゆきだるま」がたくさん乗っている列車がありました。
どうやら”みっつん”は、この絵本で雪だるまを認識した様子でした。

『きらきら』と『雪の結晶ノート』をつなぐ1冊が欲しいなぁ、と思っていた私にとってドンピシャの1冊と出会いました。
『ゆきのけっしょう』です。
東京生まれ東京育ちの”みっつん”にとっては、雪はあまり身近な存在ではありません。
この冬はほとんど降りませんでしたし、おそらく、まだ実感として雪は捉えていないと思います。
それでも、絵本で見る結晶の美しさには感じるところがあるようで、「ゆきのけっしょう!」と嬉しそうに指さしながら楽しんでいます。
雪の結晶というモノと、「ゆきのけっしょう」という言葉とが”みっつん”の中で結びつき、そして、雪の結晶を見つけたということは、母と共有したい素敵な発見になっているようです。

科学絵本には、「身近なもの・体験と科学的な見方や考え方を結ぶ懸け橋」としての働きと、「まだ知らない世界への扉」としての働きがあるように思っています。
そういう意味で、『ゆきのけっしょう』は、私にとっては主に前者、”みっつん”にとっては後者なんだな、と思いました。

舞落ちてきた結晶があっという間に消えてしまうという辺りで、夫は、「北海道では服に落ちてきた雪の結晶が消えないでそのまま残ってたぞ。」と突っ込みを入れてきました。
東京暮らしの私には全部同じ雪国に思える地域でも、本州なのか北海道なのかで、雪の質が違うようですね。
『きらきら』の写真も北海道で撮影されたものだそうです。
北海道の読者と、たとえば新潟の読者の感想を比べてみたら面白そうですね。
同時に、ベントレーが撮影していたバーモント州ジェリコに降る雪はどうなのかな?と気になってきました。

『雪の結晶ノート』
マーク・カッシーノ/ジョン・ネルソン 
あすなろ書房
2009年
¥1,200+税

『雪の写真家 ベントレー』
メアリー・アゼアリアン絵/ジャクリーン・ブリッグズ・マーティン 
BL出版
1999年
¥1,400+税

『きらきら』
谷川俊太郎:文/吉田六郎:写真 
アリス館
2008年
¥1,000+税

『さいしゅうれっしゃのあとで』
市川宣子:作/柿本幸造:絵
ひさかたチャイルド
2008年
¥1,200+税

『たくさんのふしぎ2017年2月号 ゆきがうまれる』
前野紀一:文/斉藤俊行:絵
福音館書店
¥700+税

『ゆきのけっしょう』
武田康男:監修・写真/小杉みのり:構成・文
岩崎書店
2019年
¥1,300+税